屋根からの雪庇の落下による事故防止のため、ブロック塀を設置しました。
うちの東側は北側の家に通じる私道、いわゆる「旗ざお地」です。
隣の家とは私道を挟むことになるため、接近しておらず、開放的なのはよかったのですが、けっこう人通りが多いスペースです。
一方、特に冬場、北西の季節風でできる屋根からの雪庇は、東側にどんどん成長していくので、私道を通る人や駐車中の車に当たらないかが心配のタネでした。
この私道での駐車は、習慣的にうちの敷地内にはみ出して行われ、普段は特に使わないスペースなので、はみ出す分には一向に構いませんが、万一、雪庇の落下による事故が発生した場合、こちらの管理責任が問われることにもなりかねません。
何か対策をと考えた結果、やはり敷地境界にフェンスを設け、責任分界点を明示することが必要だと考えました。
ただし、フェンスとは言っても、ここ札幌においては、雪に耐える構造でなくてはなりません。
雪に耐える構造とは、単に雪に埋もれるのみならず、除雪の加重、すなわち横方向から押される力にも耐えうることを意味します。
しかも除雪は人力だけでなく、ブルドーザーやショベルカーが使われることも想定しなくてはなりません。
針金のような棒状の金属を使ったフェンス、薄い鉄板でできたフェンスは、雪が少ない地域では主流になり得るところですが、雪に耐える構造とは言えません。
これらのことから、雪国で安くフェンスを構築する手段は、ほぼブロック塀一択となります。
ところが、ブロック塀の扱いについては、阪神淡路大震災以来、撤去が主流となっており、新たに設置する場合には、基礎構造や控え壁などの細かな規則が定められています。
これらを遵守した場合、必要な基礎構造とするための費用が高額になるほか、控え壁など作ると家の壁との間が狭くなり、家の周囲のアクセスが悪くなります。
一方、ここでは地下3mぐらいまで泥炭層が分布しており、建造物の沈下対策として、泥炭層の下まで加重を伝達する基礎が必須となっています。
家の基礎は、長さ3m、33本の杭の上に載っています。
近所の塀を観察してみても、ひどく沈下したり、傾いているところが多々見受けられます。
万一、地震で倒れて他人に当たるなどすると、大変なことになってしまいます。
このことから、控え壁なしでも倒れず、大掛かりな基礎が不要で沈下もしない構造を考えると、杭を地盤からブロック内部まで貫通させるのがいいかなと考えました。
杭には多量に流通していて、比較的安価な単管を用いることにしました。
杭の長さは、試験的に打ち込んでみた感触で、全長2.5m、地中1.7m、地上0.8mとしました。
3mの泥炭を貫通し、支持層である固めの粘土まで届きませんが、それ以上打ち込むのが大変だったことと、塀の荷重は知れていることを勘案して判断しました。
一応、地震時の安定計算として、水平方向に静的な980galの加速度を受けた場合、ブロック塀の先端の変位は3mm程度であることも確認しました。
大地震で家が壊れても、塀は無事かも知れません。
しかし、ブロック塀に杭を貫通させるような構造は一般的ではありませんので、外構業者に頼んでも引き受けてくれるところがないか、あったとしても相当高額となるでしょう。
したがってDIYで遂行することとしました。
まず、簡単な測量をしたところですが、必要な延長は12.4mとなります。一般的なブロックの幅は40cmなので、31列の施工となります。
必要な高さは、境界を示すことが目的なので、必要最低限として1mもあればいいかなと考えました。
一方で、地中埋設部分も凍上影響回避のため30cmは必要です。
このことから、高さ20cmの普通ブロックを6段+高さ10cmの傘ブロックを1段、合計130cmのブロック積みとして、地中埋設部分を30cm、地上部分を1mとすることとしました。
設置位置は、敷地境界から少し引いて、境界から5cm内側がブロック塀の外側となるようにしました。
カットした舗装です。
当初、再生処分場に持っていこうと思いましたが、家の北側の外構処理に再利用しました。
地面の中は、地上から20cmぐらいまではアスファルトの下の敷き砂利、さらにその下、地上から50cmぐらいまでは敷地を造成した際の盛土で、コンクリート殻やその他の破片など、いろいろな物が混入しています。
さらにその下、地上から約3mまでは泥炭となっています。
したがって、地上から50cmをうまく抜ければ、泥炭の中は障害物もなく、まっすぐに杭を打ち込めるはずです。
この杭はブロックの穴を通すため、できるだけ正確な位置に、鉛直に打ち込む必要があります。
まずは、だいたいの位置に少し穴を掘り、
鉄ピンを鉛直になるように地中に打ち込んでいきます。
次に、先端にこんなピットを付けました。
自作ハンドオーガーで、穴を少しづつもみ広げていきます。
さらに、長さ約1mぐらいの下穴あけ専用杭で、敷地造成盛土を貫通させるまでの穴をあけていきます。
この杭は、下穴あけ専用として何度も使います。
この杭の先端には、市販の単管打ち込み用先端を溶接しています。
この先端は1個200円もするので、本杭の先端には何も付けずに打ち込んでいます。
本杭は、いろんな支障物を貫通した、下穴をあけた後に打ち込むので、ほとんど泥炭を貫通するのみであり、先端を付けなくてもスムーズに打ち込めます。
この下穴あけ専用杭は何度も使うため、頭が割れてきます。
市販の打ち込み用の先端キャップを付けますが、それも上面が丸く切れてくるので、さらに別の端材を溶接して補強しました。
1m程度の下穴あけ専用杭を、打ち込むにも結構な衝撃荷重が必要ですが、抜くのも簡単ではありません。
下穴がうまく通ったら、本杭を打っていきます。
傾いたりしたらブロックの穴を通すことができなくなるため、直しながら打ち込んでいきます。
ブロックの穴に通すには、塀の軸方向に±5mm程度、横断方向に±10mm程度のクリアランスしか許容できません。
最初は、ジャッキを使って丁寧に直したり、いろいろと試しましたが、最終的に最も簡単だったのは、鉄のハンマーで横から思いっきり叩くことでした(笑)。
基本的に造成盛土の下は泥炭のはずですが、どうしても地中の何かに当たって、それ以上打ち込めなくなる場合があります。
いわゆる高止まりですが、31本中1~2本がそうなりました。
本当は良くないのですが、やむなく杭を短く切りました。
なんだか凸凹していますが、
とりあえず杭打は完了です。
必要なモルタル量をザッと見積もったところ、だいたい1m3近くになる計算です。
モルタル用の砂を1m3注文し、配達されたところです。
穴を掘って、基礎砂利を入れていき、
基礎コンに埋める鉄筋を杭に溶接しました。
沈下防止のため、鉛直加重は地盤ではなく、杭に伝達させる考え方としています。
しかし、杭の表面は亜鉛メッキのため、ツルツルしていてモルタルとの付着力は期待できそうもありません。
そこで、このようなずれ止めを杭に溶接して、鉛直加重が杭に伝達されるようにしました。
ずれ止めは細めの丸鋼を単管に巻き付けて、カットして作っています。
このずれ止めを杭に溶接して止めていきますが、溶接の際に丸鋼で作ったずれ止めを仮固定しようにも、クランプを使うのではツルツルの表面の単管にうまく仮固定するのに大変苦労します。
そこで、こんな治具を作成し、
簡単に仮固定できるように工夫しました。
モルタルの配合は、砂2:セメント1として、
水セメント比は60%程度が理想的だなと考えつつも、
特に水は計量せず、
作業性をみながらできるだけ水分を少なめにする方法としました。
基礎の根入れは、30cm程度あれば凍上はしないだろうと推定し、基礎掘削を約40cm、基礎砂利を5cmを、敷きモルタルを5cmをとしました。
下から2段目のブロックが
地面から10cm程出ることになります。
基礎掘削で出た砂利混りの土は、残土処分にも困るため、
分級、
洗浄して、
基礎砂利や
骨材など、いろいろなことに活用しました。
大玉はブロックの穴に入れて、モルタルを節約しました。モルタルだけで何でもやると費用が高くなります。
普段から仕事で大量のコンクリートに接していますが、骨材の大切さやありがたみが改めて身に沁みます。
残土から出た細かい粒径のものも、余さず外部の埋戻しに使って活用します。
秋から始めた連日のがんばりで、とりあえず基礎となる
下2段は完了させることができました。
ここまで来れば、あとは淡々と地上部分を積み上げていくだけなので、気持ち的にもかなり楽になります。
もう冬が来るので、一旦作業を中断し、残りは空積みで越冬することとしました。
たとえ空積み状態であっても、雪庇が落下して通行人に当たる心配はなくなりました。
これで吹雪の夜もゆっくり眠れそうです。
これまでなら、こんなに大きな雪庇ができたら、すぐに屋根に登って落とさなければならなかったところですが、これからは放っておいても安心です。
春になったら作業を再開し、本積みを完成させることとします。
施行延長12.4m、材料+道具一式で、10万円以内で完成の予定です。
そして冬が明け、作業再開です。
下2段は半分地中に埋まるため、位置出しや高さは適当なまま施工しましたが、3段目より上は、外からバッチリ見える部分なので、位置出し・鉛直出しなど、きちんとやりながら完成を目指します。
ところが、土日限定で天候制限もあり、さらに家族サービスを優先するとなると、なかなか作業日数を確保できません。
基礎部分が既にできあがり、上の方は空積みであっても、基本機能はほとんど発揮しているので、何が何でも完成を急ごうとする気持にならなかったこともあります。
こんな状況で、2006年秋までに、3段目と4段目をモルタルで本積みして、2006年の作業は終了となりました。残りは2007年に行うこととします。
この間、未完成だったこのブロック塀にある事件が起こりました。
隣接する家の外壁塗装が行われた後、トラックにその足場を解体した資材を積み上げたところ、荷崩れを起こして多量の単管・足場材がうちの未完成のブロック塀や外壁に激突したのです。
仮積み中のブロックや窓枠・外壁に多数の損傷を受けました。
しかし、幸いなことに、ほんの数cmの差で窓枠だけが被害を受けたものの、ガラスは無傷で済みました。
事故の瞬間は家族が室内にいましたので、人に当たっていたらタダでは済みません。本当にぞっとする事件でした。
その後、さらに冬が明けて2007年となり、5段目と6段目を積み上げました。
地表に出る部分の下半分、4段目までは、基礎としての強度や重量が必要だと思い、ブロックの穴部分にも全てモルタルや石を詰めました。
しかし、それより上の部分、5~6段目は重量を軽くするべきだと考え、単管が通る穴は間詰めが必要ですが、他の穴は中空とすることとしました。
4段目までは全てのブロックの穴を間詰めしていたため、次の段のブロックを載せるときには、ブロック全面にモルタルを敷き延ばせばよかったのですが、ブロックの穴を空間のまま残すとなると、穴の部分にはモルタルを敷く必要はありません。
ただし、コテのみで必要な部分だけにモルタルを載せるもの案外難しく、段ボールでコの字型断面の枠を作って、余分な部分にモルタルを載せることなく、早く施工できるように工夫してみました。
この枠を使って、ブロックにモルタルを載せると、
こんな感じにうまくいきます。
段ボール製ですが、包装用のOPPテープを貼って遮水していたので、最後まで使えました。
また、穴の内側にはみ出したモルタルももったいないので、
不要なオタマに棒を付けて、できるだけ回収しています。
はみ出したモルタルを回収後の穴の中はこんな感じになります。
そして、工程は6段目に到達です。
6段目の上の方には鉄筋を貫通させ、モルタルで鉄筋とブロックとの一体化を図る予定です。
しかし、単にモルタルを投入しても穴に落ちてしまうので、ストッパーとして新聞をギュッと握ったものを穴の上の方に詰めました。
さらに、モルタルの水分が染み込みにくいように、なるべくツルツルした質感のチラシを敷き、
モルタルを2cmほどの厚さで均して、鉄筋回りの充填に備えました。
そして、鉄筋を通しで入れていき、継目も念入りに溶接して、一体化させました。
角の繋ぎ部分もこんな感じに溶接して、鉄筋を接合させています。
北側の角部の状況は写真のとおりです。
そして、最上段の傘ブロックを積み上げ、やっと完成を迎えることができました。
天候や家族サービスで作業日数が確保できなかったこともあり、足かけ3年もかかってしまいました。
ですが、仕上がりは満足できる状況です。
また冬が来ましたが、家の東方向はこのような様子です。
いままで使っていなかった空間でもある、塀と外壁の間を雪捨て場として、雪を押し込んでみとところ、結構な量を入れることができました。
北側の様子です。このとおり、冬はものすごいことになります。
北側の家の車も、いやになるような埋もれ方になっています。
うちは別の記事で書いているとおり、カーポートもどきの「多目的構造物」を造ったので、冬の暮らしがかなり楽になりました。
西側の様子です。
この家を建てた1997年以降、ずっと空き地であり、雪捨て場など有効に使わせていただいたり、夏場は何度か除草するなど手入れをしたり、子供と遊んだりといろいろな思い出があったうえ、開放感的にも重要な空間でしたが、残念なことに2007年夏、ついに家が建ってしまいました。
ブロック塀のほうは、一冬を過ごしても、傾きや沈下は一切見られず大満足の結果です。
自画自賛になりますが、素人作業にしてはビシッとしています。
家内にも喜んでもらえたのでよしとします。
コメント
自分も昨年、北区に新築しました
庭に塀を作りたく色々な所に見積もりしていただきましたが
安いところで100万ほどなので手が出ません(^_^;)
DIYしようかとネットを徘徊していたらここを見つけました
とても参考になりました
ひとつ質問ですが
塀に使った単管パイプは錆びとかは大丈夫なのでしょうか?
とても気になりました
コメントありがとうございます。
コメントにスパムが多すぎて、気付くのが遅くなり申し訳ございません。
単管のサビですが、セメントの中にあるものは、鉄筋と同様に錆びにくいです。
現に13年経過したこの塀でもサビの滲みなどもなく、健全そのものです。
ありがとうございます
今年体調不良で退職したので、ゆっくりと単管基礎塀に取り掛かろうかと思います(笑)
また何かありましたら、質問させていただきたいです(^-^)